米国ニューヨークとドバイを拠点に世界5カ国に事業を展開する次世代型エンターテイメントテクノロジーカンパニー「NOBORDER.z」は、今年の7月に世界4大ファッションウィークの1つであるミラノファッションウィーク2021のユニコーンファッションアワード in JAPANにおいて、同社の持つ仮想空間XANA(ザナ)の技術を活用した、ヴァーチャルファッションショーを制作した。
また、NFTプラットフォーム「XANALIA」の開発も進めているNOBORDER.z。今回は、今回は同社のCEOであるRIO TAKESHI KUBO氏に、同社の描くバーチャルプラットフォームとNFTマーケットの構想について、お話を伺った。
RIO TAKESHI KUBO
NOBORDER.z Founder / CEO
ドバイ在住の連続起業家、アーティスト 米国ロサンゼルスを中心に音楽活動を行い、avexよりアーティスト及び作曲家としてメジャーデビュー。著名アニメなどの主題歌などを担当した後、独立。DJ、音楽プロデューサーとして4度にわたるワールドツアーを開催し、世界200カ国70都市にて公演を行なう。ブロックチェーン、メタバースなどのテクノロジーとエンターテイメントの融合を目指してNOBORDER.z(ノーボーダーズ)を起業。NFTメタバースのXANA、NFTマーケットプレースXANALIAをローンチし、2021年に潜在時価総額1000億円を超える市場評価を受ける。現在世界7カ国を拠点に、エンジニア数100人以上にまで事業を急成長させている。
■ スマホユーザー向けのバーチャルプラットフォームへ
— まずは仮想空間「XANA」、次世代型NFTマーケットプレイス「XANALIA」の概要、特徴を教えてください。
「XANA」は弊社が開発を進めているメタバース(仮想空間)だ。ユーザーがアバターになって好きなものを制作したり、様々なサービスを提供してライフスタイルや経済圏を作ることができるプラットフォームを目指している。
こういったバーチャル空間内では、デジタル資産を創ることが重要なので、自分の着てる服などのアバター、所有する家や土地はすべてNFTを使っている。そのため、NFT自体を売買する場所が必要だと考えて作ったのが「XANALIA」というマーケットプレイスだ。
— こういったバーチャル産業に参入されたのは、どういったきっかけからだったのだろうか?
私自身がIT出身ではなく、音楽というエンターテイメント出身であることが関係している。弊社の社名である『NOBORDER.z(ノーボーダーズ)』は、あらゆる壁を越えていく者達という意味だが、元々は当時私がDJとして世界中を回っいた頃の、多国籍メンバーによるDJグループの名前だ。多国籍のメンバーで、世界を跨いで、世界をひとつにするようなエンターテイメントをつくるという目的だけ決まっいたが、当時はその手段となるのが世界規模のフェスティバルを開催することだと思っており、ツアーや企画を繰り返しいた。
そんなある日、ツアーで訪れた中国で、たまたまブロックチェーンに出会い、とてつもない衝撃を受けたのだ。
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世界が "NOBORDER.z "になる時代が来たんだ、それをテクノロジーが実現するんだ!」と。そう思ったのだ。テクノロジーとエンターテインメントを融合させれば、自分がずっとやりたかったことができると思い、全財産をつぎ込み、仲間を集めて起業したのだ。
— 現時点では、すでに参入されているユーザーや企業がいるのだろうか?
今年の秋から冬にかけて本格リリース予定で、昨年末から徐々にテストリリースをしたり、XANA内で、企業のバーチャルイベントなども手伝ってくる。コロナ禍の影響でオリンピックに向けて取り組みをされてきた企業や行政は、リアルイベントが制限されてバーチャルイベントへの切り替えが進んだため、今年の5月にはそのお手伝いも行いた。
たとえば、東京の江東区の試みとして、オリンピック、パラリンピックを盛り上げることを目的とした障がい者の方々が作ったアート展を考えられていて、それをバーチャル空間で実現できないかとご相談がありた。スケジュールはタイトだったが、バーチャル上で色々なアートが観覧でき、それらの作品を作者や審査員の方が説明してくださる仕様で開発を行いた。
こういった取り組みが高い評価を受け、現在、国内外の様々な業界から相談を受け、現在コラボレーションに向けてコミュニケーション重ねている。
—「XANA」の強みとしている部分や特徴はあるか?
私自身、VRチャットが好きで研究しいたんだ。コミュニケーションが斬新で、アメリカを中心とした海外のユーザーがにぎやかに楽しそうしていて、見ているだけで楽しい。
ただ、これを一般企業のビジネスの場としていくには、一部の先駆的なテクノロジー企業を除いて難しい。一般的なコンシューマーを対象としている企業は、対象ユーザーの慣れ親しんでいるデバイスがスマホなので、VRは機材を準備するのにはハードルが高すぎた。
そういった流れから、スマホ向けユーザー向けのサービスを優先して開発を進めた。VR、PC、スマホのいずれでも体験できるのがXANAの大きな強みだが、まずはスマホユーザーに対してバーチャル空間を提供し、VR機材を持っている方は上位互換でVRを楽しめるという方針で進めている。
特にVRチャットなど既存のメタバースとの差別化となるのが、NFTとの連動性だと考えている。今まではバーチャル空間でどれだけ遊んでも、アバターを着飾っても、それがビジネスや利益には繋がらないだった。だが、これからはバーチャル空間で遊ぶこと、空間そのものをつくること、アバターの着るものを作ること自体が経済活動に繋がる時代がくるはずだ。今は世界的にもこういった事業はまだ少数しかないので、ベンチャーならではのスピード感を持って進めて行きたいと考えている。
— 組織や開発の拠点は海外なのだか?
弊社の法人格はドバイ、アメリカ、インド、パキスタンにある。私自身はドバイに住んでいて、エンジニアの多くはインドとパキスタンに住んでいて、他にもイギリスやいろんな国のエンジニアがいる。日本での展開は、バーチャル化などのビジネス展開を模索している企業や行政の紹介を受けたことから始まりた。それまでは日本の企業と繋がることはなかなかあらないだったが、いまではありがたいことに急速に日本のクライアント様の輪も広がってきている。
■ 次世代型バーチャルファッションショーの試み
— 「XANA」の技術活用したバーチャルファッションショーを開催したとのことだが、この概要を教えてください。
Unicorn Fashion Award(UFA)からボリュメトリックを使ったショーの開催は決まっいたものの、その世界観や可能性を見せられるような演出、クリエイティブ面をディレクションできるチームが必要だということで、弊社に依頼がありた。弊社で取り組んでいるバーチャルヒューマンや3D仮想空間の世界観をお見せしたところ、非常に可能性を感じてくれたね。僕たちがチームに入る前は、すでに現実のショーで目にしたことのあるようなアイデアが多かっただが、せっかくならVRならではの表現を活かしたファンタスティックな空間にしようと決めた。
できあがったショーは、KDDI社が作られているARゴーグルを使用して見るパターンと、「XANA」の技術を使いVR仮想空間内で見るパターンがある。
— バーチャル空間ならではの演出、というのは具体的にどういったものだろうか?
世界中がコロナ禍で分断されたが、それを自分というものを見つめ直す機会とポジティブに捉えていくため、自分の再発見やバーチャルでの新しい自己表現とコミュニケーションの手段となるようなファッションショーにしようと決めた。
今回のショーのテーマとして『再誕生』というキーワードを決めて、命の源の風景としての海や羊水のイメージ、朝焼けの海のイメージなどをもとに、水の上をモデルが歩いて行く。これは絶対にバーチャルでないとできないことだ。カメラワークもこれまでのような一般的な絵ではなく、まるでSF映画のように、上空や海面すれすれなど現実では難しいようなアングルなど、カットを一切使わず360度自由自在にカメラが動き回る演出にして、今までのファッションショーでは見れなかった映像を創ることにこだわりた。
— 今回の制作も踏まえて、バーチャル技術を活用することで、ファッションショーはどのようなものとなっていくとお考えだろうか?
XRのようにリアル、バーチャルが共存する形で多様化させていくと予測している。今までは選ばれた人しか直接見ることができず、多くの人は平面映像を通じてしか見れなかったファッションショーだが、新作のショーが家にいながら、またはカフェや仕事場でもまるでショー空間にいるかのように見れるようになるだろう。
そして、そこだぐに購入までが完了できるようになる。もう一つ最も大事なプロセスがあり、服は結局、自分が着るものだ。ワンクリックで自分の体型そのままの自分のアバターがそれを試着しているのが見えるようになる。
このように、ショーにおける新しいデザインやトレンドの発見から、それを試着、購入するまでのプロセスが、かつてない形で新たなエクスペリエンスとなる。ユーザーと作り手がより繋がれるようになる。このファッション分野とバーチャルの融合は可能性にあふれていると思いる。
— このショーは「XANALIA」にてNFTとして発表予定とのことだが、どのように公開する予定なのだろうか?
今回のイベントは技術的な試行錯誤を目的としているため。NFTは現段階では販売しない。
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NFTをどのように製品化するかは、アワードの最終デザイナーの製品が出てきたときに議論している。それをどうやってNFTにするかを議論している。
私たちは、単なる静止画や動画ではなく、3Dやバーチャルな性質を持つNFTを作ることに特化している。物理的な販売だけでなく、デザイナーに限定的な所有権を与えたり、アバターに着用させたりすることで、バーチャルにデザインを生かす可能性を提供している。
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私たちは、これまでのファッション業界にはなかった新しい枠組みやマネタイズの手段を提供したいと考えている。もちろん、地域の多くの企業やブランドが関わるプロジェクトでもある。まずは試験的にミニマムスタートを行い、成功例を作って次につなげていきたいと考えている。
■ ファッションとNFTの未来
— ファッション領域においては、NFTビジネスをどのように展開していこうと考えているか?
ショーのNFT化はあくまできっかけだと思っていて、メタバースの中でアバターが着るためのブランドさんのNFTを主に作っていきたいと思っている。ショーで披露されるアイテムは限定品なので、なかなか普段は着ることがないだが、アバターだったら着放題。限定10着のコレクションを購入して、アバターで写真を取れることに価値があると思う人も増えてくると思いる。
誰もがLINEやFacebookで自分のアイコンを設定し、インスタグラムでセルフィーを共有するようになるまでに、約10年ほどの時間がかかりた。そして、次はアイコンやセルフィー、吹き出しチャットの代わりに誰もが自分の好きな外見や格好をしたアバターとなって交流するようになる時代が次の10年だと思っている。
現在、SNSでアカウントを持っていない人を探すのが難しいように、10年後にはアバターを持っていない人を探すのが難しくなるだろう。 アバターのファッション性が求められるようになるのは、現実世界の人間と同じようになる。 とてつもない変化だ。金融の世界では、これまで株式投資しかできなかった世界に、突如として暗号資産が登場し、今では毎日のように話題になっている。アートの世界では、物理的な物にしか価値がなかったのが、NFTの登場で、デジタル資産が急に価値を持つようになった。たった半年で、アートの世界では誰もNFTを知らないのと同じように、デジタルファッションも、世界の歴史に残るようなファッション革命を起こそうとしている。
— バーチャルやNFTの導入や普及に、地域差を感じることはあるか?
パンデミックは、いずれ来るべきだったバーチャル化の波を大幅に加速させた。きっとパンデミックがないと、これほどまでに多くの企業が我先にとバーチャルビジネスに参入していなかっただろう。それに応えるために、世界中のプレーヤーが一気にブーストして動き出してくる。やはりアメリカや韓国が世界をリードしていると思いるし、それとは全く違ったところで、中国がものすごい勢いで成長していると感じる。デジタル化が早く、大きい資本でどんどん参入してくるので目が離せない。私の個人的な見方では、クリエイティブやセンスはアメリカや韓国がリードしており、ビジネス規模や資金力、マネタイズ力は中国が強力なイニシアチブを発揮しているという肌感がある。
日本はアニメや漫画など素晴らしいクリエイティブが多いだが、グローバルで市場をとっていくようなコンテンツはアニメやゲームなど一部だ。まだ世界に届いていないものも多い印象なので、日本にしかできないアバターやバーチャルファッションの展開もあると思っている。弊社は私と数名だけが日本人で、他の大多数の社員が海外出身という特殊な企業だ。だからこそ、日本人特有のクリエイティブな発想を武器に、世界で通用するような形に作り上げていくことが可能になると信じている。
— 今後、NOBORDER.zとしては、どういったことに挑戦していきたいと考えているか?
海外で人気を得ているコンテンツをみると、作り込まれたゲームよりも、ユーザー自作のわけのわからないキャラクターやゲームが人気だったりする。その理由のひとつは、クリエイティブなユーザーがたくさん集まって面白いものを他のユーザーに提供し、それによってクリエイターも儲かるという好循環が生まれていることだと思っている。この循環を作り出していくために、ユーザードリブンで自由に服やアイテムが作れたり、買えたりするところから優先して開発している。
また、今はリアル(現実世界)をベースとして事業を展開されている企業様、ブランド様、クリエイター様と一緒にバーチャル事業の最前線を作っていきたいと考えている。それは文字通り新時代をつくるというものだから、とてもエキサイティングな取り組みだ。様々な方からのコラボレーションのお問い合わせをお待ちしている。